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連載 吉井子の冒険 (13)

連載 吉井子の冒険

作:しみずせい (13)

 

 政孝は屋上から中庭を見ていた。中庭にはいくつもの屋外作品が並んでいて、屋上からみると先ほどみた黒い板状のオブジェがよく見えた。

「そうか、あれだったんだね。吉井子。お父さんの影は。」と政孝は言った。

「そうよ。よくすぐにわかったわね、さすが、まさくん。なかなか気づかないのよ。」と嬉しそうに吉井子が答えた。

 太陽の光が黒い板状のオブジェに反射して、向かいのカーブした白の美術館の壁に人型の像を映し出していた。たぶん、板の反射率とか微妙な凹凸が平らに見えた板に細工されていたのだろう。そして、時間、そう、たぶんある一定の時間しかその影は出てこないし、もしかしたら日時も限定されているのかもしれない。一年前と今日、同じ9月9日にまた白の美術館に来たのは、偶然でなく吉井子にとっては必然だったのかもしれないと政孝は思った。吉井子はお父さんに会いに来たのだ。

 

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